【読書】ふくわらい / 西加奈子 / ★★☆
西加奈子著「ふくわらい」読了。
最近のわたしの本の選び方はジャケ買いスタイルが多いのですが、こちらも装丁が気に入って手が伸びた本の1つ✴︎
西加奈子さんご自身が装画を製作されたそうですね。
- 作者: 西加奈子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2015/09/07
- メディア: 文庫
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装丁が好みの本は内容も好みなケースが多いと聞いて。その通りだなーと思ってます、江國香織とか。
装丁を眺めるという点では、bird graphics book store なんかはデザイナー毎にタグが付いているので気に入ってますね。私の中では、読書と装丁は切っても切り離せない存在です🥺
さて肝心の中身はというと、終始変態ワールド全開でありましたが、いくつかはっとさせられたことがありました。
1つめ。
人はみんな「先っちょ」しか見えていないこと。見えている先っちょが私にとってはあなたのすべて。
その奥に、何がどれだけ広がっていようとも、見えている先っちょがその人そのものなのです。
しずくちゃんが酔っ払いながら語っていたこの先っちょ論に心打たれました。
2つめ。
カリスマ性への憧れ。
強く共感した。本書では、プロレスを生業としている守口が、猪木に対して抱いていた感情。「もっている」人は「もっている」のだことに気付いたのが遅かったという。
最近、あんまり意識しなくなったのは、周りにカリスマ性を持った人が居ないからなのかしらん?圧倒的なカリスマ性を目の前にした時に感じるあの無力感ったらたまらないもんなぁ。
3つめ。
言葉を、丁寧に、正しく、使いたくなりました。
言葉を乱暴に扱わない、その究極系が鳴木戸定。だからこそ、守口は定に、カリスマ性を見出したんじゃないかしら。
守口は、プロレスと言葉が大好きだから。
4つめ。
自分をとりかこむ世界に「恋」をすること。それは人と人との関わりの中で生まれるものだったということ。
定が恋を思う時、脳裏に浮かぶのは、父と共に歩いた道であったり、母の乳房で合ったり、悦子の光を失った目であったり、小暮しずくのつやつやした唇であったり、アイスコーヒーの光の涼しい音であったりした。(中略)
定は、世界に恋していた。目に入るもの、耳に飛び込んでくるもの、唇を撫でるもの、全てが眩しく、そして、くすぐったかった。今定は、世界を、これ以上ないほど、クリアに見ていた。定と世界の間には、お互いを隔てるものはなにもなく、そしてそのことがまた、定をくすぐったい思いにさせるのだった。それを恋というのなら、こんなにも美しい感情はない、と、定は思った。
引用元:ふくわらい(西加奈子)
おまけ
・レスリングの躍動感の描写がすばらしい。技の表現1つ1つに鬼気迫るものがある。
・登場人物が、程度の差はあれどそれぞれ社会不適合者でありましたが、それぞれ魅力的だった。もがき苦しむ守口さんは綺麗だし、定のために自分のためにムキになって命令口調になっちゃうしずくちゃん、ビール飲みまくるしずくちゃん、酔っ払って泣上戸なしずくちゃん、本当にかわいい。
・ガングリオン潰したシーン読んでる時、旦那さんに「なんちゅー顔して読んでんの」って言われました。ガングリオンは、潰さないでほしかった。
・全裸にはならなくてよろしい。